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D-Double 『Bankjes』を語る

 更新を怠っている隙に随分多くの新譜が出た。リアルタイムの優れたアルバムの話も良いが、天邪鬼な性格なので大ヒットしているアーティストのいいアルバムを持ってきて、素晴らしいでしょ!?なんて間抜けな事はしたくない。そこで今回はD-Doubleが2021年2月25日にリリースしたアルバム『Bankjes』の紹介をしたい。

 

 D-Doubleは1990年生まれのオランダのラッパーである。あまり日本では有名ではないかもしれないが、かなりスキルの優れたラッパーである。オランダのTopNotchという大きなレーベルに所属している。

 

www.youtube.com

 

 余談だが、オランダはEDMを中心に多くのオランダ出身のDJが活躍した事もあり、オランダ=EDMで結ばれやすいが、他の音楽も盛んな国である。

 

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1. Intro 2

2. Wat Weet Je Van

3. Dealer

4. Anders

5. Beter Leven

6. Know What I Mean

7. Garantie

8. Wat Ik Wil

 

1, 4, 5曲目がオススメだが、8曲の中でタイプの違うビートをチョイスしており高感を持った。そしてとにかくラップが上手い。ラップがいけているが故に、フックが物足りない様に思えるところもある。

 

Lloyd Banks 『The Course Of The Inevitable』を聴き終え

 

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 どれほど彼のシーンへの帰還を待ち望んだだろうか。元G-UnitのメンバーのLloyd Banksが、10年ぶりのアルバムをリリースした。もし今10代の子がこれを聴いても"やばい"とは、思わないだろう。私自身もかつてその経験をしている。これは私が子供の自分に聴いていたスターの一人、Lloyd Banksのアルバムを聴いて書き始めたものである。

 

 今や50Centがどれ程勢いがあり、世界中が熱狂していたか話そうとも伝わらない。となれば、Lloyd Banksの事を話しても伝わるわけがない。だから彼の経歴や時代の細かい話はしない事にした。ただ彼が注目されていた時のHip Hopから2度の大きな潮目の変化があり、もう時代はそうではなくなってしまった。

 

 2019年に彼自身Twitterに、丁重なファンからの新作を聴きたいという言葉に返信する形で、『現実を見ようよ、誰も聴かないよ』という趣旨の発言を残している。私は彼の曲が好きだったので、もうリリースはないものと思い、憧れのスポーツ選手がもう戦える状態にないと知った時にも似た寂しさを感じた。

 

 そしてSpotifyLloyd Banksのアルバム『The Course Of The Inevitable』を発見した。SNSから半分撤退しており、出遅れた自分を少しばかり不甲斐なく思うが、それでもストリーミングサービスのおかげで、すぐに聴くことが出来たのは幸いだ。

 

 再生を始めすぐに、もう時代は変わったんだと痛感した。音が古いのは、録音が古いからではない。彼の音楽は時間が経っているのだ。J coleの新作のような今の中に生きるヒップホップではなく、かつてのヒップホップの音だ。この点に関しては、ミキシングやマスタリングが大きく関わっているのだが、現在の音にしようという意思は感じ取れない。

 

 だからこそ、私は余計な哀愁を感じた。もうLloyd Banksは今の時代にはいないのだ。いいアルバムだったが、嬉しさよりも寂しさが増さった。きっとここまで思うのは、世代だったからだろう。

 

 ヒップホップは新陳代謝を止めるとその先に死が待っている。99%のアーティストはいなくなる。残っていて、キャリアを続けられるラッパーなどほぼいない。それでいい、そして同じようにリスナーも淘汰されいく。今のヒップホップは十分に楽しい。カルチャーを学べ、まずはソウルのレコードを聴け、NWAを聴け、と押しつけられる時代は終わった。懐かしさを胸にしまって楽しめばいい。私も誰かにこれを聴けというつもりはない。もしこれが真のヒップホップのサウンドだと押しつけるようになれば、次は自分たちがヒップホップに淘汰される日が来るだろう。ヒップホップにおける最高価値は"今"なのだ。

Vince Staples 『Vince Staples』を聴き終え

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 Vince Staplesの第一印象は、あまり良いものとは言えなかった。2015年のファーストアルバム『Summertime'06』で、彼の名は広く知れ渡るわけだが、当時の私はそのサウンドに乗り切れなかった。

 端的にあまり好きな声でも無いし、ビートは苦手な方だった。ただ彼のインタビューを読んで共感する事多く、彼の動向は追っていた。

 そして2017年の『Big Fish Theory』には度肝を抜かれた。サウンド面もラップでも本当に優れていたと思う。今でもこのアルバムは、年間ベストアルバムに値する作品だと思っている。

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 『Big Fish Theory』以降、ずっと好きでいられるかと思ったが、2018年の『FM!』はあまり好みではなかった。ただVince Staplesというラッパーに対するリスペクトは、年々強くなってきている。

 2011年のMixtapeをリリース以降、2018年の『FM!』まで8年連続である程度纏まった曲数の作品をリリースしている。言わずもがな出せば良いというものではないが、このペースの継続は大変だったと想像に難くない。

 そして2021年7月9日、2年8ヶ月ぶりとなる4枚目のスタジオアルバム『Vince Staples』がリリースされた。アルバム名がアーティスト名が同一の作品は、最近あまり見かけないが一部の人々には懐かしいかもしれない。

 全曲Kenny Beatsがプロデューサーとして参加しており、MixはManny Marroquinが担当、マスタリングはMichelle Manciniが担当している。

 聴き終えてクレジットを確認し、MixがManny Marroquinと知り納得した。

 Manny Marroquinは、ヒット曲のクレジットに彼の名前を見ない日はないと言うほど著名なミックスエンジニアである。彼のMixが好きで良く聴いているのだが、今回のアルバムは彼が担当して正解だったと思う。

 今作は『Big Fish Theory』を上回る名盤かもしれない。コロナ禍に置いて、アーティスト達の作品も変わってきた様に思える。

 今年に入ってから、何枚かのアルバムには度肝を抜かれた。スケジュールがキャンセルになって、余裕が出来たのかわからないが、音楽が一層厳しい時代に追い討ちをかけられる昨今に、優れた作品が発表されている事は、大きな希望である。

 

 

 

 

 

UKの若手ラッパーZeekoが引退??

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 Zeekoは期待の新人と呼ぶに吝かではない存在だった。メロディックなフローを売りに、派手なライフスタイルと大麻を謳った“Buzz”は、上半期のシングルランキングを作るならトップ10には入ったと思う。しかしながら、彼は音楽から引退するようだ。

 日本時間の7月9日22時に確認した限り、ストリーミングサービスやYoutubeの公式MVは削除されている。インターネットを探せばコピーは見つかるが、そのリンクを貼るのも憚られる。検索する限り引退は、宗教上の理由によるものとの事。仕方ないことではあるが、非常に残念でならない。

 Zeekoの"Buzz"はそれほど魅力的な曲だった。彼が本当にこのまま引退するのか、また音楽を始める日が来るのか、いずれにせよ私はこの数週間非常に楽しい時間を過ごさせてくれた彼とこの音楽に感謝の気持ちでいっぱいである。