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Lloyd Banks 『The Course Of The Inevitable』を聴き終え

 

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 どれほど彼のシーンへの帰還を待ち望んだだろうか。元G-UnitのメンバーのLloyd Banksが、10年ぶりのアルバムをリリースした。もし今10代の子がこれを聴いても"やばい"とは、思わないだろう。私自身もかつてその経験をしている。これは私が子供の自分に聴いていたスターの一人、Lloyd Banksのアルバムを聴いて書き始めたものである。

 

 今や50Centがどれ程勢いがあり、世界中が熱狂していたか話そうとも伝わらない。となれば、Lloyd Banksの事を話しても伝わるわけがない。だから彼の経歴や時代の細かい話はしない事にした。ただ彼が注目されていた時のHip Hopから2度の大きな潮目の変化があり、もう時代はそうではなくなってしまった。

 

 2019年に彼自身Twitterに、丁重なファンからの新作を聴きたいという言葉に返信する形で、『現実を見ようよ、誰も聴かないよ』という趣旨の発言を残している。私は彼の曲が好きだったので、もうリリースはないものと思い、憧れのスポーツ選手がもう戦える状態にないと知った時にも似た寂しさを感じた。

 

 そしてSpotifyLloyd Banksのアルバム『The Course Of The Inevitable』を発見した。SNSから半分撤退しており、出遅れた自分を少しばかり不甲斐なく思うが、それでもストリーミングサービスのおかげで、すぐに聴くことが出来たのは幸いだ。

 

 再生を始めすぐに、もう時代は変わったんだと痛感した。音が古いのは、録音が古いからではない。彼の音楽は時間が経っているのだ。J coleの新作のような今の中に生きるヒップホップではなく、かつてのヒップホップの音だ。この点に関しては、ミキシングやマスタリングが大きく関わっているのだが、現在の音にしようという意思は感じ取れない。

 

 だからこそ、私は余計な哀愁を感じた。もうLloyd Banksは今の時代にはいないのだ。いいアルバムだったが、嬉しさよりも寂しさが増さった。きっとここまで思うのは、世代だったからだろう。

 

 ヒップホップは新陳代謝を止めるとその先に死が待っている。99%のアーティストはいなくなる。残っていて、キャリアを続けられるラッパーなどほぼいない。それでいい、そして同じようにリスナーも淘汰されいく。今のヒップホップは十分に楽しい。カルチャーを学べ、まずはソウルのレコードを聴け、NWAを聴け、と押しつけられる時代は終わった。懐かしさを胸にしまって楽しめばいい。私も誰かにこれを聴けというつもりはない。もしこれが真のヒップホップのサウンドだと押しつけるようになれば、次は自分たちがヒップホップに淘汰される日が来るだろう。ヒップホップにおける最高価値は"今"なのだ。