Vince Staples 『Vince Staples』を聴き終え
Vince Staplesの第一印象は、あまり良いものとは言えなかった。2015年のファーストアルバム『Summertime'06』で、彼の名は広く知れ渡るわけだが、当時の私はそのサウンドに乗り切れなかった。
端的にあまり好きな声でも無いし、ビートは苦手な方だった。ただ彼のインタビューを読んで共感する事多く、彼の動向は追っていた。
そして2017年の『Big Fish Theory』には度肝を抜かれた。サウンド面もラップでも本当に優れていたと思う。今でもこのアルバムは、年間ベストアルバムに値する作品だと思っている。
『Big Fish Theory』以降、ずっと好きでいられるかと思ったが、2018年の『FM!』はあまり好みではなかった。ただVince Staplesというラッパーに対するリスペクトは、年々強くなってきている。
2011年のMixtapeをリリース以降、2018年の『FM!』まで8年連続である程度纏まった曲数の作品をリリースしている。言わずもがな出せば良いというものではないが、このペースの継続は大変だったと想像に難くない。
そして2021年7月9日、2年8ヶ月ぶりとなる4枚目のスタジオアルバム『Vince Staples』がリリースされた。アルバム名がアーティスト名が同一の作品は、最近あまり見かけないが一部の人々には懐かしいかもしれない。
全曲Kenny Beatsがプロデューサーとして参加しており、MixはManny Marroquinが担当、マスタリングはMichelle Manciniが担当している。
聴き終えてクレジットを確認し、MixがManny Marroquinと知り納得した。
Manny Marroquinは、ヒット曲のクレジットに彼の名前を見ない日はないと言うほど著名なミックスエンジニアである。彼のMixが好きで良く聴いているのだが、今回のアルバムは彼が担当して正解だったと思う。
今作は『Big Fish Theory』を上回る名盤かもしれない。コロナ禍に置いて、アーティスト達の作品も変わってきた様に思える。
今年に入ってから、何枚かのアルバムには度肝を抜かれた。スケジュールがキャンセルになって、余裕が出来たのかわからないが、音楽が一層厳しい時代に追い討ちをかけられる昨今に、優れた作品が発表されている事は、大きな希望である。