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GeeYou 『Pain & Profit』を聴き終え

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 ノースウェストロンドンのラッパーGeeYouの初のアルバム『Pain & Profit』を聴き終え、私は暫くの間物思いにふけていた。全曲がGeeYouらしく評価に値する一方で、物足りないアルバムのように思えたからだ。

 GeeYouは、2019年からコンスタントにシングルのリリースを続け、評判を高めてきた。今回のアルバムには、既にリリース済みの4曲収録された為、結果としてアルバムの新鮮味を損なった格好だ。昨今の配信事情を鑑みても、シングルで発表された曲が、数年後にアルバムに収録される事は何の問題もない。また予め断っておくが、アルバム用に収録された曲の出来が悪いわけでもない。2019年に発表のシングル “Slide Thru”と“7AM” と“Amg” は、このアルバム中で強い存在感を示した。

 GeeYouの特徴である哀愁のあるメロディックなアプローチが最大限生かされていたのは、既に発表済みの曲であったため、物足りなさを感じたのだ。しかし総じて一定のクォリティをキープしている為、アルバム自体がいい出来だ。繰り返すが、このアルバムの欠点は、直近ではないリリースのシングルに食われてしまった事である。UKのラップアルバムとして及第点は軽くクリアしている。

 では今作『Pain & Profit』に足りなかったモノは、なんだったのだろうか。ある種の完成形態となったGeeYouのスタイルは強固なものであるが、そこを少し崩すような意外性があればもっとこのアルバムは面白く聴けたのではないだろうか。ちょっとした遊びがあるだけで印象は大きく変わる。他ジャンルとのクロスオーバーや意外性だけを狙ったコラボは必要はない。単純にビートに幅を持たせてくれていれば、面白かった。恐らくGeeYou自身がこのタイプのビートが好きなのだろう。好き嫌いは突き詰める事で個性となっていく。今回、彼の個性を十分に特徴を伝える作品になっただろう。このアルバムがGeeYouのマイルストーン的な作品になる事を期待している。客演まみれになる事なく、スタイルを貫いた『Pain & Profit』はGeeYouらしさ満点のアルバムである。

 

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